【日本租税理論学会アピール】(内閣府『日本学術会議の在り方についての政府方針』《2022年 12月 6日》に関して)

日本学術会議・声明「内閣府『日本学術会議の在り方についての政府方針』(2022年 12月 6日)について再考を求めます」を支持します

内閣府は「日本学術会議の在り方についての方針」(2022年12 月 6 日)を公表し、この方針をふまえた「日本学術会議の在り方について(具体化検討案)」(2022年12 月 21 日)を示しました。政府は、2023年通常国会に所定の法案提出を目指すとのことです。2023年2月16日には、日本学術会議側に日本学術会議法改正案要綱を提示しました。

しかし、現在日本学術会議は自主・独立の精神に基づき鋭意改革を進めています。日本租税理論学会は,現時点では、政府立法での法制化は必要ないと考えます。

日本学術会議が2022 年 12 月 21 日に出した声明「内閣府『日本学術会議の在り方につい ての政府方針』(令和 4 年 12 月 6 日)について再考を求めます」を支持します。内閣府が出した政府方針および具体化検討案に対して意見を述べ、内閣府の具体的検討案の基づく政府立法には強く反対します。

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●2023年2月21日
                           日本租税理論学会理事長 石村耕治
                           日本租税理論学会事務局長 望月 爾

<アピール>
政府は、2020 年秋の「内閣総理大臣による日本学術会議第 25 期新規会員推薦者の任命拒否」 の問題に対する説明責任をいまだ果たしていません。にもかかわらず、2022 年 12 月 6 日に、内閣府は「日本学術会議の在り方についての政府方針」(政府方針)を出しました。 その後、内閣府は、12月21日に、12月6日の方針をふまえた「日本学術会議の在り方について」(具体化検討案)を示しました。

しかし,政府方針および具体化検討案は,日本学術会議の自律的かる独立した会員選考への介入が懸念されるなど重大な問題をはらむ内容となっています。

これを受けて,日本学術会議は 2022 年 12 月 21 日に,声明「内閣府『日本学術会議の在り方につい ての政府方針』(令和 4 年 12 月 6 日)について再考を求めます」(日本学術会議声明)(声明 内閣府「日本学術会議の在り方についての方針」(令和4年12月6日)について再考を求めます (scj.go.jp))を出しました。

日本租税理論学会は、6つの懸念事項をあげた日本学術会議の声明を支持するとともに、政府方針および具体化検討案に対する意見を述べ、内閣府の具体的検討案の基づく内容の法制化には強く反対します。

<理由>
まず、すでに日本学術会議が自主・独立の精神に基づき改革を進めており、政府が介入して法改正を必要とする理由(立法事実)があるのかどうか極めて疑わしいといえます。

また、政府方針および具体化検討案の決定プロセスに問題があります。これらは、日本学術会議からの意見聴取などを経ずに一方的に出されたものです。適正な手続を欠いているといわざるを得ません。

また、政府方針および具体化検討案の内容については、とりわけ①「政府等と問題意識や時間軸等を共有」、会員等の選考・任命について②「会員等以外による推薦などの第三者の参画」、③「内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」には、重大な問題があります。

これらの内容は、学問の自由を保障する日本国憲法(憲法)に抵触するものと考えます。 憲法第 23 条で定められている学問の自由とは、個々の研究者が自由に研究することを保障することはもちろんのこと、学術界全体が専門家集団として固有の価値観と規律に基づき自主的かつ自律的に運営されることの保障を含むからです。

学術界は、固有の問題意識と時間軸によって運営され、かつ客観的な視点から知見の創造を行うことが求められています。憲法第 23 条は、学術界が政府等の方針への順応を強いられ、その結果として悲惨な戦争に突き進んだことへの深い反省から設けられた規定です。政府が学術界に対して「政府等と問題意識や時間軸等を共有」を求めることは、こうした憲法条項制定の経緯、さらにはこれまで培われた学問の自由の理念とぶつかります。

次に、会員等の選考・任命に第三者を参画させることも大きな問題をはらんでいます。 現行の推薦方式は、諸外国における同じような機関でもおおむねスタンダードとなっています。政府案では、「第三者」として、具体的には、行政のみならず産業界の関与を想定していると見られます。すなわち、会員の選出に学術界の判断とは異なる判断基準を持ち込もうとしているわけです。しかし、学術界の判断が尊重されないようになれば、学問の自由、学術界の自律性、独立性が恒常的に侵害されることが危惧されます。ひいては、諸外国から日本の学術界の自律性、客観性に疑いの目が注がれることが危惧されます。学術界がグローバルな広がりを見せるなかでは、わが国独自のスタンダードが学術の発展の大きな障害になりかねません。

「内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置」を求めるこ とは、時の政権が学術界に恒常的に介入できる仕組みをつくることを意味し、学問の自由を保障する憲法に抵触する疑いあります。政府方針および具体化検討案では「高い透明性の下で厳格な選考プロセスが運用されるよう改革を進める」といっています。しかし、2020 年 9 月のいわゆる「日本学術会議会員の任命拒否」について、政府はその意思決定プロセスなどをいまだ明らかにしておりません。「透明な政府」とは程遠い実態にあります。本当に改革が必要なのは政府の側であるといえます。

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政府方針および具体化検討案は、学問への行政・政治介入を恒常化するものです。わが国の学術界の自主・自律、そして学問の自由に重大なマイナス効果を及ぼすものです。現在、日本学術会議は自主・独立の精神に基づき鋭意改革を進めております。現時点では、政府立法での法制化は必要ないと考えます。

加えて、今後の議論にあたっては、政府の一方的な提案によるのではなく、今回の主役である日本学術会議はもちろんのこと、ひろく学術界・国民との対話を基礎とするように求めます。

学術界の使命は、「科学技術立国」、すなわちわが国の国力向上のみにあるわけではありません。地球規模での人類の平和共存、発展に資する真理の探究にあります。人文、社会、自然のいずれの分野にいても、真の科学の発展には、あまねく真理の探究を支える学問の自由の保障が必要不可欠です。