日本学術会議法案に関する日本租税理論学会理事長声明

政府は、2025年3月7日、「国の特別の機関」とされている現在の日本学術会議(以下「学術会議」といいます。)を廃止し、国から独立した法人格を有する組織としての特殊法人「日本学術会議」(以下「新法人」といいます。)を新設する日本学術会議法案(以下「本法案」といいます。)を閣議決定し、衆議院に提出しました。

しかし、本法案からは戦後間もなく制定された現行法の前文に相当する規定が削除されていることから、そこにうたわれた科学者の初心に基づく学術会議の使命が見失われることが危惧されます。言い換えると、時の政治権力から独立した立場で科学的根拠に基づく政策提言を政府に行うという、これまで学術会議が果たしてきた任務の遂行に対する大きな障害になりかねないつくりの法案です。

本法案に対し、2025年4月15~16日に開催された日本学術会議第194回総会において声明「次世代につなぐ日本学術会議の継続と発展に向けて~政府による日本学術会議法案の国会提出にあたって」および決議「日本学術会議法案の修正について」が可決されました。

日本租税理論学会(以下「本学会」といいます。)はこの声明と決議を支持します。なぜならば、本法案はナショナル・アカデミーが備えるべき5つの要件を満たしておらず、新法人の自主性・自律性・独立性を制限し、ひいては学問の自由(憲法23条)に由来する学術研究の自由な進展を損なうおそれが大きいからです。

とりわけ、本法案では、新法人に対する政府の財政措置は補助にとどまるとされます(48条)。その結果、公的財政支出が確保されなくなり、ナショナル・アカデミーとしての安定した財政基盤の維持を難しくしかねません。ひいては、独立した政策提言を行うことに対する委縮効果をうむおそれがあります。

こうした懸念から、本学会は、日本学術会議が可決した声明および決議を支持し、国会において慎重な審議に基づいて本法案が抜本的に修正されることを求めます。

2025年4月28日
日本租税理論学会 理事長 石村耕治